事件の詳細                         ※一審の判決全文はトップページにリンクした裁判所ウェブサイトからご覧いただけます。
2005年11月22日、広島市の小学1年生木下あいりちゃん(当時7歳)が下校中に、ペルー国籍ホセ・マヌエル・トレス・ヤギ被告(当時34歳)に性的暴行を受けて絞殺された上、ダンボール箱に折り曲げるように詰められ捨てられるという事件が起きました。
あいりちゃんの父・建一さんは、非常に苦悩された末、「再発防止のために、真実を知ってもらいたい」「娘は『広島の小1女児』ではなく、世界に一人しかいない『木下あいり』なのです。もう一度あいりのことを思い出してほしい。」と、あいりちゃんが受けた性的暴行の事実や実名報道をあえて要望されました。そう決意されたきっかけは、亡くなったあいりちゃんが「苦しんでいる人がたくさんいるんだよ、助けてあげて」とお母さんの夢の中で告げたことでした。
公判では、被告の供述や鑑定結果から、犯行時に被告があいりちゃんの陰部や肛門部に外子宮口に至るまで深く、相当な出血をみる亀裂を生じさせるほど強引に、手指を何度も挿入し、自慰行為をして射精したことが明らかになっています。遺体が見つかった時、あいりちゃんの頬には涙の跡がありました。犯行時間帯に被告の部屋から物音がしなかったという証言について、建一さんは「下手に声を出すと殺されると思い、涙を流しながらも暴れなかった。何も悪いことをしていないから、暴行が終われば帰してもらえると思ったんでしょう。(被告は)そんな希望も全然理解せず殺した。性的暴行は拷問に等しい。女性にとって命を奪われるようなものです。暴行を受けた時点で、あいりは一度、殺されている。『やっと帰れる』と思った瞬間、か細い首に大きな手を回され、また、非情に殺された」と語られました。(実際に8歳のときに性的暴行の被害に遭った女性は、「耐えるとかではなく、わけがわからず恐怖で身が固まってしまい動けないし声も出ないのです。」と話されました。)
性犯罪は重罪です。あいりちゃんは二度殺されたのです。
広島地方裁判所は2006年7月、「卑劣で冷酷であるものの、死刑をもって臨むにはなお疑念が残る」としてトレス・ヤギ被告に無期懲役の判決を下しました。残忍な殺し方をしておきながら求刑の死刑判決が得られなかったのには、
@死刑適用については、83年の最高裁判決で殺害された被害者の数などを考慮するとした基準が示されており、被害者1人の事件の死刑選択には、複数の事件と比べより悪質性が高い必要がある 
A計画性がなく衝動的な犯行 
B前科を認めるに足りる証拠がない
以上のことから矯正が不可能なほどの反社会性、犯罪性があるとは言い切れない  といった理由からです。 
地裁では立証がなされていないとして認められませんでしたが、トレス・ヤギ被告はペルー国内で少なくとも過去3回にわたって少女暴行未遂事件を起こし(パカスマジョ区刑事裁判所に残る裁判記録より)、97年には有罪判決を受けて7ヶ月服役。出所後再び別の少女に性的暴行を加えようとし、全国に指名手配されていました。性犯罪の前歴を隠してペルーを出国するため偽名を用い、不正に取得したビザを使って不法入国しています。92年の捜査記録には、暴行後女児に「人に話したら殺す」と脅して解放したことや、犯行の一部を認めた後に「悪魔がのりうつった」と供述する、暴行に関して「覚えてない」とするなど、今回とよく似た供述をしていたことが記されています。犯行を隠蔽する、うそを突き通す、悪魔の仕業にする、判決を不服として控訴する、母国での前歴について黙秘するなど、トレス・ヤギ被告には反省の色がまったく見られません。
検察庁は極刑を求めて控訴。2007年11月8日から控訴審が始まりました。2008年12月9日の判決は地裁へ差し戻し。弁護側は控訴審そのものを不服として最高裁へ上告。2009年10月16日、最高裁は高裁へ審理を差し戻しました。

参考に、法務省の2006年度版「犯罪白書」では、性犯罪のうち13歳未満の年少者に対する性犯罪者の再犯傾向が強く、34.9%に性犯罪の前科があり、他の性犯罪に比べて最も高いことが分かっています。別の受刑者アンケートでも、小児強制わいせつによる受刑者の5割近くが「再犯の不安」を自覚していることが判明。子供を狙った性犯罪の再犯リスクが大きいことを示す結果といえます。

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